『夢でまた会いましょう』メアのお話。


-----------------------------------------------------------
-----------------------------------------------------------



私は誰?ここはどこ?

気がついた私は、真っ白な世界の中心にいた。

ここはどこなの?どうして私はここにいるの?

考えてもよく分からなかったので、とりあえず歩いてみた。



どこまで行ってもどこまで行っても白、白、白。

何だか目が痛くなりそうだけど、そんな感覚なんてない。

私は誰?どうしてここにいるの?



いつまでもいつまでも歩いたけれど、端が見えることはなかった。



どうすればいいのかな、私。

一人途方にくれた。

何だかとても不安だった。寂しかった。


何で私、こんなところで一人なの?

ここは一体どこなの?何でこんなに白いの?

私は誰なの?何で?どうして?どうすればいいの??





そしてまた、ずっとずっと歩き続ける。

何だか泣きたくなってきた。何故か分からないけど、急に切なくなってきて、

胸の辺りがぎゅうって。

私はその場に蹲って、膝を抱え込んだ。



こんな白いだけの空間、見ていたくない。どこなの、ここは?

私は誰なの?どうしてここにいるの?

分からないよ。分からないよ。分からないよ。







その時だった。後ろから彼が声をかけてくれたのは。





「君は誰?」

私は振り向いた。男の子がいた。青いパジャマに身を包んだ、年上の男の子。

「わからない」

「分からない?分からないの?」

「うん、分からない」

私は正直に答えた。そして首をかしげた。

「私は誰なのかな?」

彼は可笑しそうに笑った。

「君は君だよ。そして、僕は僕」

「貴方は貴方?」

「うん」

「そう」

よく分からない理屈に面食らったけど、私はそれで良いと思った。
そっか。私は私だよね。でも、何者でどこから来てなんでここにいるのか分からない。

「名前も分からない?」

「うん、名前も分からない」

名前、ないといけないかな?

「じゃあ……僕がつけてあげるよ。」

「貴方が?」

「僕が」

私が聞き返すと、彼はにっこりと微笑んでうなずいた。その笑顔に、私は何だか嬉しくなった。
さっきまで一人でいたときとは全然違う感覚。彼と話すと、楽しい。

「つけて」

「うん……じゃあ…どういうのにしようかな…」

彼が考え込んだその時、突然けたたましい音が鳴り響いた。

「きゃ!!な、何?!」

「ああ、いけない。もう起きなきゃ。今度までには考えとくよ」

「えっ?」

その言葉に振り向くと、彼はもういなかった。
私はまた、白い世界にひとりぼっちになった。










「こんにちは…いや、こんばんはかな?」

その声に弾かれたように顔を上げた。彼が微笑んでいた。

「もう、遅いじゃない」

私は少し怒ったふりをした。彼は笑いながら「ごめん」、と言った。

あれから世界は少し変わった。建物が出来たし、人も出てきた。私も彼も、その世界を散歩するのが好きだった。

「名前、考えてくれた?」

私も早く名前が欲しいな。彼みたいに。

「うん、ごめん。まだなんだ。どういうのがいいのか、さっぱり分からないんだよ」

少し残念だったけど、私は待つことにした。きっと、すごくいい名前を考えてくれるんだ。
そう思うと、少しわくわくしてきた。




「あれ?」


そう言った相手を彼が振り返ったのは、ちょうど「学校」と呼ばれる建物のそばを通った時だった。
女の子が一人、こっちを見ている。

「入院中じゃなかったの?いつ退院したの?」

彼女は笑ってこっちに歩み寄ってくる。彼の知り合いなのかな?私とも話してくれるかな?
そう聞こうと思って、私は彼の方を見上げたら、彼はひどく辛そうな顔をしていた。

彼と彼女が話している。何だか私はのけ者状態。
時々彼女はこっちを見て話かけてくれるけど、彼と彼女の話は私にはさっぱり分からなかった。

「そっか、夢の中だからか」

彼女が残念そうに言った。
ゆめ?ゆめって何?

「退院したらまた学校で一緒に遊ぼうね」

私が首をかしげて考えていると、彼と彼女の会話は終わった。

「ねえ、ゆめって何?」

彼はちょっと考え込んでいたみたいだけど、私が聞くとゆっくりと顔をこっちに向けてくれた。

「この世界のことだよ」

そして、彼はまた少し考え込むと、微笑んで私の方を見た。
その笑顔が少しいつもと違う、って感じたのは、気のせいだったのかな?

「君の名前、決めたよ」

彼は微笑んでいた。





2へ